オープンイノベーションがうまくいかないーー。
成熟した企業がベンチャー企業や大学などと連携して新規事業を創造する「オープンイノベーション」に取り組む際に、こうした問題に直面することが多々あります。
問題が起きる理由は、オープンイノベーションを通じて成し遂げたい「目的」が不在だからかもしれません。
そこで本記事では、オープンイノベーションの基本、失敗するオープンイノベーションの傾向、成功させるための3つの条件、オープンイノベーションの手法を一挙にご紹介します。
- オープンイノベーションとは
- 失敗するオープンイノベーション
- オープンイノベーションを成功させる3つの条件
- オープンイノベーションの手法
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1. オープンイノベーションとは
革新的な事業を創造するために、社外のリソースを積極的に取り入れる「オープンイノベーション」に取り組もうとする新規事業担当者は多いでしょう。
オープンイノベーションとは、組織内部のイノベーションを促進するために、企業の内部と外部との技術やアイデアの流動性を高め、組織内で創出されたイノベーションをさらに組織外に展開するイノベーションモデルです。
オープンイノベーションと対となるのが「クローズドイノベーション」です。クローズドイノベーションとは自社で研究者を囲い込み研究開発を行う、自前主義・垂直統合型のイノベーションモデルです。
クローズドイノベーションは、従来の日本企業の多くが採用していた考え方です。しかし、近年のデジタルを活用した技術革新や顧客ニーズの多様化によって、市場変化が速くなったことから、莫大な投資や時間をかけて事業(製品)開発を行うクローズドイノベーションの考え方は時代に沿わない考え方になりました。
オープンイノベーションは、社外のベンチャー企業や大学と共同で事業開発をするため、人材の確保が容易になったり、成功するかわからない事業モデルのPoC(概念実証)やMVP(実用最小限の製品)実証をスピーディに行える利点があります。
2. 失敗するオープンイノベーション
オープンイノベーションは新規事業において利点が多い考え方である一方で、適切なやり方と進め方を理解しておかないと失敗する可能性が高いことに注意しましょう。
たとえば、成熟した企業とベンチャー企業が共同するオープンイノベーションの手法には、コーポレートアクセラレータイベント、アイデア公募、マッチングイベントなどがあります。これらの手法が失敗してしまう要因として、オープンイノベーションを推進することで成し遂げたい「事業の目的は何か?」を十分に言語化できていない ことが挙げられます。
この状態は言い換えると、”他社と協創するための準備が不足している状態”にあります。準備不足の状態では ①(オープンイノベーションの)取り組みの評価ができない ②事業・自社の魅力を言語化できない ③既存事業部門が動かせない といったことが起きます。
上記の3つに加えて理解しておかなければならない点として、そもそも市場ニーズの高い製品開発をしていたり、優れたビジネスモデルを持っていたりするベンチャー企業は、自走する力があるため、自ら進んで成熟した企業とのパートナーシップを結ぼうとはしません。
さらに、優れたベンチャー企業はベンチャーキャピタルやイノベーション感度の高い大企業がシード段階で投資をしていることが多く、後追いで成熟した企業と提携することにそこまでメリットを感じられないことが多いでしょう。
3. オープンイノベーションを成功させる3つの条件
以上の前提をふまえて、成熟した企業がオープンイノベーションを成功させるためにはどのような考え方や戦略を採用すればよいのでしょうか。
イノベーションを促進する組織が持っている3つの要素を参考にして、その条件を紐解いていきましょう。
イノベーションを促進する組織に見られる共通項として 1.人づくり 2.場づくり 3.目的づくり の3つがうまくいっていることが挙げられます。
人づくりを実現するステップは以下の3つです。
- イノベーションの必要性を理解する「学習」ができる
- デザイン思考やリーンスタートアップを実践を通じて理解する「経験」ができる
- 自らが解決したいと強く思う課題や顧客に向き合いイノベーションの取り組みを実践する「挑戦」ができる
場づくりが成り立つ要素には以下3つが挙げられます。
- アイデアを正しく評価する判断基準やインキュベートするための仕組みを提供する「制度」が整っている
- デザイン思考的なアプローチの定着による価値観や判断基準に基づく会話が日常化しているといった「文化」が醸成されている
- 新規事業部門に留まらずに全部門にイノベーションに挑む仲間が存在している「秘密結社」ができている
人づくり・場づくりがができていることで、成熟した企業とベンチャー企業との共通言語が生まれ、熱意と説得力を持ってオープンイノベーションの目的を語ることができます。
さらにもう一歩踏み込んだ成功条件として「目的づくり」があります。目的づくりは以下の3つのステップで作っていくことができます。
- 目的の設定:事業をすることで、社会に対してこれまで何の価値を提供してきて、これからも提供するのかという理由を言語化できる
- 目標の設定:目的に紐づいた中長期的な新規事業の目標を立てる
- 戦略:投資戦略・ポートフォリオ・組織戦略・人員計画を策定する
【目的づくりがなぜ重要なのか】
製品や事業のライフタイムサイクルが短くなったことで、現在は昔よりも事業の将来を予測することが難しくなりました。言い換えると、過去に提供していた顧客体験の延長線で事業の未来を予測する「リニア的な思考」が通用しなくなっています。
そこで、重要度が増している考え方として、過去の顧客体験の延長線から微妙に外れつつも市場の新しいニーズに適応し革新的な事業を創造する「エクスポネンシャル思考」があります。エクスポネンシャル思考を持つためには、現状(As-is)とあるべき姿(To-be)を定義して、そのギャップを明確にする「バックキャスト思考」が必要です。
バックキャスト思考を持つことで、目指すべき理想の姿(ビジョン)に近づくために、いま何をすべきか「問題」を発掘できるようになります。この問題を分解して階段構造にすることで、ビジョンに近づくための課題を棚卸しできます。
4. オープンイノベーションの手法
次にオープンイノベーションの手法についてご紹介します。オープンイノベーションの手法は、新規事業の創出プロセスに応じて適した手法が変化していきます。
たとえば、研究からアイデアの段階ではインバウンド的な取り組みとして共同研究、技術連携、産学連携、リビングラボなどがあります。アウトバウンド的な取り組みとしては、マッチングやベンチャーアクセラレーションなどがあります。
開発の段階では社外のベンチャー企業のサービスを利用したり、共同で事業創造したりするベンチャークライアントがあります。
製品化や事業化の段階では、ベンチャーの買収、ベンチャー企業に対する直接出資、VC経由での出資などを行います。また、ベンチャー企業との連携だけでなく、事業をスタートアップ化する場合は、自社から新規事業をスピンオフさせるやり方があります。
ベンチャー企業と手を組みたい場合は、最低限の準備として相手のサービスをお金を払って利用する「ベンチャークライアント方式」からはじめましょう。API連携やSDKなどで繋ぎ込みをして検証することもおすすめです。
このようにオープンイノベーションに最適な手法は、プロセスに応じて変化していきます。手法を決める前段階として「プロジェクトを通じてどういうビジョン・未来を実現したいのか」は必ず定義しておきましょう。ビジョンを固めておくことで、協創相手を見つける際の判断基準ができるためです。
【新規事業アイデアを創出するプロセスと手法】
では、ビジョンや目的を明確に定義するためには、どのようなプロセスを経る必要があるのでしょうか。そのヒントは、新規事業アイデア創出のプロセスにあります。
新規事業のアイデアの着想は、トレンド・社会課題(エンドユーザーの課題発見)などの「気づき」からはじまります。次に、常識と言われていることが事実なのか「観察」して顧客の行動を分析するアクションがあります。
観察を通じて顧客の潜在的で本質的なニーズを発掘することができ、そこから「高次の大目的」に到達することができます。それらが「閃き」につながり、事業コンセプトをベースにした提供価値やミッションの設定につながります。
そこからあるべき未来像としての「ビジョン」を定義でき、達成すべき課題としての「アイデア」が生まれ、「プロトタイプ」などを通じて、PoCやMVP実証をします。
オープンイノベーションを成功させるためには、上記のプロセスを経て、1.高次の大目的 2.事業コンセプト 3.あるべき未来像 を定義しておく必要があります。これらの定義が固まっていれば、協創相手であるベンチャー企業に対して納得感を持ってもらう説明ができるでしょう。
以上のように、成熟した企業がオープンイノベーションを成功させるためには、目的やビジョンの設定はもちろんのこと、事業を創造するプロセスの刷新やマインド自体を変化させることが必要です。
昔とちがい現在はベンチャー企業を取り巻くエコシステムが整備されています。この状況を踏まえて、成熟した企業はベンチャー企業に能動的にコンタクトを取り、協創する利点を積極的に伝えていかなければなりません。
ベンチャー企業が持つ目的やビジョンの達成に向けて「成熟した企業はどう貢献できるのか」という意欲を持って、関係を構築することがオープンイノベーションを成功させる最大要因と言えるでしょう。
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